PREV | PAGE-SELECT | NEXT




あいさつ

表紙の写真の作品は、2003年に制作したものです。
尚、当ブログの記事の引用・転載は必ずリンクを貼ってください。


≫ EDIT

みつめている主体 その15


「空像としての世界」の中のボームの対談
順序がすこし入れ替わってしまうけれど最初から書き写すことにしました。
http://pds.exblog.jp/pds/1/200901/19/62/b0086362_20273035.jpg',400,300,'1');" OnMouseOver="this.style.cursor='hand'"/>



ホログラフィによる意識のモデル

ウェーバー「最初に考えてみなければならない問題は、ホログラフィ(完全写像法)による脳または意識のモデルとは何であり、それは現在普通に考えられている脳とか意識の概念、あるいは脳や意識の概念、あるいは脳や意識の真実だとわれわれがずっと信じてきたものとどれほど違っているか、ではないでしょうか。」

ボーム「そうですね、ホログラフィによる意識のモデルが基礎としている考え方は、意識が働き始める出発点としての情報が、脳の特定部分ではなく脳全体かその大部分にわたって貯えられており、その情報は使われる度に脳のあらゆるところから取り集められた上で選択される、ということです。それは脳以外のホログラム(完全写像記録)にも起こることです。」

ウェーバー「情報はどのように取り集められるのでしょうか。」

ボーム「その問題は本当はプリブラムに意見を求めるべきですが、脳が脳神経と情報の結びついた網状組織であることはあなたにもお分かりでしょう。わたしは昨年ある説を聞きましたが、それによると、記憶はある細胞の間にめぐらされた回路の輪の中に貯えられ、記憶が脳にある種の”可塑性のある”(プラスチック)変形をもたらすというのです。従ってエネルギーが再びその輪に与えられると、最初にその輪を造り上げたパターンに似たパターンが呼び出されるわけです。それはテープに録音する原理と大差ありません。」

ウェーバー「そのパターンの呼び出しは、抵抗の最も少ない通路をとるのでしょうか。」

ボーム「厳密にいえばそうではありません。あなたがその輪を刺激するのを見るとそれが記録され、そのものに似たものを見るとその記録から出てくるエネルギーが刺激されることになります。」

ウェーバー「それは情報を取り戻すのでしょうか。」

ボーム「そうです。こうした輪は脳の局所々々にあるばかりでなく、相互に結びついた非常に多くの輪が脳全体に分布しております。そこでもしあなたが情報になる特定のもの、例えば岩を見ているとすると、レンズを手本にしたような最も単純な考え方では、その岩は一つの脳細胞に貯えられ、二番目の岩は二番目の脳細胞に貯えられる、木はまた別の脳細胞に貯えられ、そしてまたそして・・・・・というふうになる。でもこうも考えられる。岩は直線、曲線、角、そして色といった実に多くの特徴に分析され、異なったすべての情報が脳全体にわたってある種の変形を生み出すと、その場合この岩についての情報を取り戻すためには、脳全体からの情報の集積がともかくなければならないことになります。別の言葉でいえば、問題を今のように考えると、「岩」という言葉すら脳全体にわたって貯えられ、岩のもつ多種多様な特徴はすべて必ずしも一つの場所でなく脳全体に貯えられることになります。そしてこの特徴は別の種類の対象に対しては別の仕方で再び結び合わすことができます。だから概念であれ心像(ピクチュア)であれ記憶であれ何であれ形成するためには、ある種のカード索引のようなものに一対一で対応する情報ではなく、むしろホログラフィ的に貯蔵された情報を取り上げる必要があるといえます。事実コンピュータにたずさわる人びとは、現在のデジタル方式での情報貯蔵よりももっと有効な方式として、ホログラフィによる情報貯蔵にのって仕事をしています。」

ウェーバー「それはどんな脳細胞の部分でも全体を再現できる、という考え方に関係しているのですか。」

ボーム「ええ、必ずしも一つの脳細胞がというばかりではなく、一つの細胞のどの部分でも全体についての情報をもっているのです。脳細胞を多く集めればそれだけ詳しい情報がえられることになります。ご存知でしょうが、ホログラムの特徴は、ホログラムの一部を照射すれば全体像についての情報がえられることです。が、それはある限られた小さな視角からのものです。そこでホログラムのもっと多くの部分を取るとそれだけもっと詳しく、そしてもっと豊富な情報がいつもえられます。しかしホログラムからの情報は常に全体のものです。ホログラムのそれぞれの部分は対象のそれぞれの部分と対応しているのではなく、各部分はともかく全体を刻み込んでいるのです。」

ウェーバー「別の言葉でいえば、ホログラムは真理対応説と哲学者が称してきたもの、つまり像、写真板、対象という考え方と衝突する。あるいはそれに引導を渡すことにさえなるわけですね。」

ボーム「ええ、どうみても両者は両立しません。事実プリブラムは面白い見方をしていました。かれはこのホログラフィック・モデルについて考えていたが、わたしの論文を読んで考えたあげく、「ホログラムは何のホログラムであるか」と自分で自分に問いかけたのです。われわれが提案している考え方によれば、世界それ自身がホログラムと同一の一般原理で作られているか構成されているのです。ところで、内蔵秩序(インプリケートオーダー)についてどの程度説明すべきでしょうか。」

ウェーバー「どうぞお好きなだけして下さって結構です。大変興味があります。」


つづく
関連記事

| デイヴィド・ボーム/カール・プリブラム | 20:29 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

https://cocorofeel.blog.fc2.com/tb.php/1800-f4d92770

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT