「決着ついたが終わらないウクライナ戦争」

バフムトの戦い、ワグナーのプリゴジンはできるだけ早く勝ちたいと考えていたけれど、ロシアは戦争状態が長引いたほうが米覇権の崩壊が加速し、露中や非米側の結束と台頭が進むのでゆっくり勝ちたいと考えてきた、とある。これが本当なら、勝利を目の前にしたワグナーにあっさり勝ってもらっては困るから武器を送らなかったのは本当だったことになる。でもそんなにシンプルではないように思うけど。不思議なのがプリゴジンとロシア政府の関係。一見微妙とも思える関係こそが作戦だと思うんです。
ロシアに詳しい人が、ロシアは悪者にされ続けているけれど、ロシアは気にしていないと言っていたんですが、確かにロシアの寛容さが歯がゆくなるくらいだけど、田中宇さんの解説を読むと、ロシアが悪者にされるのは作戦と言うことになる。
亡くなったロシア兵の多くはワグナーの兵士なんでしょうね。複雑な思い。
長いので全文はリンク先でどうぞ。
決着ついたが終わらないウクライナ戦争
2023年5月26日 田中 宇
https://tanakanews.com/230526ukrain.htm
5月20日、ロシアの民兵団(傭兵団)ワグネルと政府軍が、ウクライナ戦争の最後の激戦地といわれたドネツク州のバフムト(アルティモフスク)を陥落(解放)した。 (この街は帝政時代にバフムトと呼ばれ、ソ連がアルティモフスクと改名し、ウクライナの米傀儡・反露政権が2016年にバフムトに戻した。露側はアルティモフスクと呼び続けている。米傀儡・反露の日本ではバフムトと呼ばれている。今は併合されてロシアの一部だからアルティモフスクと呼ぶのが正しいが、私は記事を短くしたいので短い方のバフムトを使う) (Ukrainian military official confirms Russian victory in Bakhmut as Wagner head announces city has been taken)
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半年間の激戦で、ウクライナ軍は6万-10万人の戦死者を出した。ウクライナ軍は、他の戦場でも兵士と武器弾薬車両を大量投入して露軍に破壊殺戮され続け、徴兵しても兵力が足りない。徴兵したばかりの兵士を数日間の訓練だけで前線に送り出してどんどん戦死させてきた。支援してきた欧米も、軍事品の在庫が払底してきている。 バフムトの戦闘のほとんどは政府軍でなくワグネルが行った。その指導者プリゴジンによると、224日続いたこの戦闘でのワグネルの戦死者は2万人だった。ウクライナはロシアの3-5倍の戦死者を出している。欧米が大量の兵器を送ってもロシアの優勢は崩れない。 (Prigozhin Says 20,000 Wagner Fighters Were Killed in Bakhmut Battle)
ドイツの諜報長官が最近、ロシアは昨年来の戦争でほとんど疲弊・不安定化しておらず、この先もずっと戦争を続けられる国力や民意を維持していると認める分析を発表している。 ウクライナ軍よりも露軍が甚大な損失を被ったという報道は、米国側の歪曲と、露側の「偽悪戦略」の産物だ。 (Russia able to conduct its special military op for a long time - German intelligence chief)
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ロシア側でバフムトの戦闘を主に戦っていたのは民兵団のワグネルで、政府軍は補助的な存在だった(ワグネルも諜報や補給は政府軍に依存している)。ワグネルと政府軍の間には、バフムトの戦闘に対して温度差があった。 ワグネルは、できるだけ早く勝ちたいと考えていたが、政府軍を動かすプーチンの露政府は、戦争状態が長引いた方が米覇権の崩壊が加速し、露中や非米側の結束と台頭も進むのでゆっくり勝ちたいと考えてきた。 (Inside the ‘Bakhmut meat grinder’: How Russia forced Ukrainians to retreat from Artyomovsk, their supposed ‘fortress’ in Donbass)
露政府は開戦直後から、わりと楽に勝っているのに苦戦しているふりをしたり、有能なのに無能なふりをする「偽悪戦略」をやってきた。 (プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類)
ロシアはこの戦略によって優勢な状態で戦争を長びかせ、米欧が「もうすぐロシアを倒せる」と勘違いして頑張りすぎて軍事経済の資源を浪費し、非米諸国が米欧に愛想を尽かして米覇権が崩壊する流れを作ってきた。 CIAなど米諜報界は隠れ多極派が牛耳っているので、配下のマスコミを動員して、ロシアの偽悪戦略に(わざと)まんまと騙される姿勢をとり続けている。 (The Western Media Disinformation Campaign: Fall Of Bakhmut, A Case In Point)
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プーチンの露政府と露軍は、劣勢のふりをしつつ隠然と優勢で、米国側を自滅させていく偽悪戦略をできるだけ長く続け、米覇権の崩壊と多極化・露中や非米側の台頭を進めたかった。米国の隠れ多極派も、ウクライナ軍に反攻させ、バフムトの戦いの膠着を演出したかった。 そこに殴り込んできたのが、資本家のプリゴジンが軍資金を出してロシアの監獄にいる囚人らを集めて作った傭兵団のワグネルだった。 ワグネルは、4月末にバフムト市街の95%を占領し、プリゴジンが「アルティモフスク(バフムト)はもうすぐ陥落するから、露政府は勝利宣言してウクライナ戦争(特殊作戦)を終わらせるべきだ」と表明した。 (決着ついたウクライナ戦争。今後どうなる?)
だがプーチンら露政府はプリゴジンの要請を無視した。プリゴジンによるとその後、露軍はバフムトでの戦闘を全てやめてしまい、露政府はバフムトのワグネルに弾薬を送らなくなった。バフムトの戦いを膠着させる演技をして戦争状態を長期化したい露政府にとって、ワグネルの活躍はありがた迷惑だった。 (Head of Russia's Wagner Group Says We Are Starting to Get Ammunition)
プリゴジンは、政府軍の戦闘中止や弾薬不足の放置について公式に不満を表明した。露政府は仕方なく弾薬供給を再開し、ワグネルはバフムト市街の最後の5%をウクライナ軍から奪い、5月20日にバフムトを解放(陥落)した。 プーチンはバフムトを称賛した。露政府の建前は、できるだけ早くウクライナに勝つことだから、称賛しないわけにいかなかった。 (露政府がウクライナの激戦地に武器弾薬を十分に送ってない、という演技??)
ワグネルと露政府は親密だ。ワグネルはアフリカなどの親露的な諸国に進出してその国の軍隊を助けることもやっており、露軍がやれない非公式な軍事行動を世界的に展開している。露政府はワグネルに感謝し、ワグネルは露政府に忠誠を誓っている。 (US Plans Hybrid War Vs Wagner In Africa)
全体的にはそうだが、バフムトでの状況は変則的だ。プーチンがプリゴジンに裏の戦略を説明して戦線膠着の演技に協力してもらうことはできたはず(米覇権を破壊する偽悪戦略はロシアの国益に沿っている)。しかし、そうならなかった。裏戦略の漏洩を恐れたのかもしれない。 (Wagner Chief Clarifies That Only His Forces Making Gains In Bakhmut)
プリゴジンは最近、露政府のやり方に批判的だ。彼は「露政府は、ウクライナを非武装化するために開戦したのに、それは米欧がウクライナに大量の兵器を送って武装を増大させる逆効果を招いた」「露政府はウクライナを非ナチ化(懲悪)するはずだったのに、世界(米傀儡諸国)がウクライナを良い国として支持する結果を招いている」と語っている。 (Wagner Chief Reveals 20,000 Of His Fighters Killed At Bakhmut, Says Putin's War Has Backfired) (With Bakhmut Hanging In Balance, Will Putin Order Takedown Of Wagner Boss?)
それは、確かにそうだ。しかし、もっと広い観点で見ると逆のものが見えてくる。欧米はウクライナに大量の兵器を送り続け、露軍がそれを破壊し尽くすことで、この戦争はウクライナの背後にいる欧米を兵器不足と財政難に陥らせて「非武装化」している。 欧米の軍事産業は今後5年ぐらいフル稼働しないと開戦前の兵器在庫量に戻せない。これからドルが崩壊していくと、米欧は財政力が低下して軍事産業の長期のフル稼働ができなくなる。
米国側は、この戦争によって兵器の保有量が減って「非武装化」されていく。いずれ米国側は覇権低下でウクライナを支援できなくなり、ウクライナも非武装化される。この戦争は長期的に、ウクライナだけでなく米国側全体を非武装化する。
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記事のURL
https://tanakanews.com/230526ukrain.htm
本文にURL無さそうなので一応コメントしておきます。
| xiangwu | 2023/05/28 20:38 | URL | ≫ EDIT